今回のガンプラは、現行のラインナップから離れ、HGUC創世記における傑作キットをご紹介。
それは、「HGUC ガンタンク」です。
それでは、早速レビューへと参りましょう。
パッケージ
付属品一覧
シンプルかつ可動箇所の少ないガンタンクは、同時期のキットと比較してもパーツ数は少な目。
現行のアイテムと比べればさらに少なく、慣れたユーザーなら30分で組み上がる手軽さ。
手軽さ、組み立てやすさという面では、初期HGUCに一日の長ありか?
RX-75 ガンタンク
「RX-75 ガンタンク」は地球連邦軍が初めて実用化した試作MSである。
当初、MSの開発はゼロからのスタートであった連邦軍としては、上半身は人型ながら下半身は履帯を採用した異形の機体だが、これは連邦軍サイドのMS開発ノウハウが皆無に等しかったことも影響している。
そのため、連邦軍は鹵獲したジオン軍の『MS-06 ザクⅡ』を解析後、その開発と運用を発展させた、完全なる人型MSは後発機である『RX-77 ガンキャノン』まで待つこととなった。
本機は対MS車両「RTX-44」をMSとして再設計した機体であるが、同時期にジオン公国軍が実戦投入した「YMT-05 ヒルドルブ」と同じくモビルタンクに近い設計である。
機体はコア・ブロック・システムと呼ばれる特殊な構造を初採用しており、中核となる『コア・ファイター』を始め、上半身『Aメカ』、下半身『Bメカ』の3ブロックで構成されている。
これにより、合体・分離を行う事が出来、破損部分をパージして換装可能となった他、同じコア・ブロック・システム搭載機とパーツを共用する事を実現している。
主に長距離砲撃及び支援を目的としたMSで、実弾兵器主体ながらも強大な火力を有し、その火力は単機で艦艇クラスの破壊力を持つとされる。
反面、機動力や運動性の低さ、格闘戦を想定しない等、MS同士による集団運用を基本としている。
V作戦で投入された機種としては、下半身に巨大な履帯を採用した独特のフォルムであるが、これは当時まだ連邦軍のMS開発技術が未成熟であったことが要因の一つである。
同時に、後続機の二足歩行システムの実用化が失敗した場合の保険として、今後の連邦軍製MSが履帯での移動を選択肢の一つと捉えていた節もある。
実際、陸上ではその巨大な履帯を駆使し、時速70kmもの速力で行動可能で、これは当時の二足歩行MSの移動速度を遥かに上回り、履帯移動による有効性も証明している。
本機は『V作戦』で開発された最初のMSだが、ジオン軍によるサイド7奇襲の折にその大半が破壊されてしまったため、残った機体はWB隊所属機のみとなっている。
HGUC ガンタンクは、今から18年前にリリースされたHGUC 7番目のキットながら、ガンダムやガンキャノン等の初期RXシリーズでは唯一リニューアル化されていない機体。
そもそもリニューアルの必要すら無いと断言出来る程、シリーズ屈指の完成度を誇ると言っても過言ではありません。
現在の視点で見ても、そのプロポーションバランスは極めて良好。
HGUC初期のモデルながら、各部のディテールやモールドも精密に造形化。
デザインも比較的シンプルな関係で、色分けも組み立てただけでほぼ完遂している程です。
シールすら付属していない程、このキットの多色成型は、ただただ驚異の一言です。
18年前のキットでこれは特筆すべきものですが、短所が全く無いという訳でもありません。
現在のバンダイが誇る超精密加工技術と比べ、一部造形が甘いところがあったり、はめ合わせが若干悪い部分もあります。
また、ABSやKPSも実用化されていない時代のキットなので、関節強度も後発のシリーズに劣ります。
と言っても、短所よりも長所が大きく勝っているため、致命的という程の不安要素はありません。
頭部
巨大なキャノピーが特徴的な頭部。
クリヤーパーツはアンダーゲート仕様で、極力ゲート痕が目立たない方式を採用。
アンテナも別パーツ化され、頭部のディテールは優秀です。
首はボールジョイント接続で、肩の砲台が干渉するので、可動範囲はそれなりといった所。
上を向くのは比較的得意ですが、自由度はそれでも低め。
パイロットも造形されておりますが、あくまで人らしきものが乗っていると思わせる程度のレベルであり、ヘビーユーザーには物足りない印象。
改善策として、他の製品からパイロットフィギュアを流用する方法があります。
クリヤーパーツで覆えば、造形の甘さは多少紛れますが、改良の余地あり。
コックピット内部のディテールも控えめで、熟練者にとっては腕の見せ所。
肩部
肩アーマーは特殊な構造で、デザインの割りには腕も水平まで上がります。
加えて、肩周りは動きを遮るものも無いため、自由度は中々に優秀。
肩~腕にかけては合わせ目が集中しているため、見栄えを重視するなら消すか、モールド化を推奨致します。
腕部
肘関節は当時でも珍しい二重関節が採用されておりますが、それでも肘は90°も曲げられません。
設定でも構造上、肘関節の可動範囲の狭さは明言されており、ある意味原作再現と捉えても不満はありません。
そもそも、格闘戦を想定いてしないガンタンクに、大胆なアクション性は不要と言えます。
肘はど真ん中に分割線があるため、ここも必然的に処理対象となります。
ボッブミサイルランチャーは上手く立体化されておりますが、銃口の内部は意外とあっさりとした造形。
内部は、コトブキヤのモデリング・サポート・グッズ(M.S.G)等による、ディテールアップを念頭に置いても良いかもしれません。
胴体
胸部のダクト、コア・ブロック・システムのディテール等も別パーツで再現。
バックパックは、設定デザインを忠実に立体化。
胴体はポリキャップによる軸関節接続で、左右に旋回することくらいしか出来ませんが、可動域はかなり狭いです。
肘関節同様に、設定でもコア・ブロック・システム採用で可動域の狭さが明言されておりますが、敵に殴りかかる機体でもないため、特に問題ありません。
しかしながら、戦車で砲塔が自由に旋回出来ないのは、致命的と言わざるを得ません。
キットの出来が悪いという意味ではありませんので、悪しからず。
ガンタンクを象徴する120mm低反動キャノン砲は、行俯角の調整が可能で、可動範囲は90°には及ばないものの良好。
砲身も長大で、火力の凄まじさも納得のボリューム。
さらに、砲身は左右に多少開くことが出来、想像以上にフレキシブルに可動。
分割は如何にも一昔前のキットといった趣で、合わせ目は当然の如く存在。
可動部はポリキャップむき出しなので、塗装に対して何かしら対策を立てねばなりません。
下半身
どっしりとした下半身は、巨大な履帯のおかげでボリューム感は抜群。
戦車を連想させるディテールや形状で、リアリティも申し分なし。
履帯部分は、現状でも十分通用する造形。
履帯は軟質素材ということで、車体の形状に追従して曲がってくれますが、曲げすぎると白化の恐れあり。
履帯と車輪は完全固定式なため、可動は皆無。
これは、後に製品化される「HGUC Gアーマー」にも採用されたパーツ。
車輪のモールドも緻密ですが、組み立て時はパーツの組み間違いが無いように注意しましょう。
MGのように、履帯自体が足のように動くことは出来ませんが、人によってはこの方が自然に見えます。
裏側のモールドも精密で良好。
素材の劣化か、一部パーツははめ込む時に白化してしまったので、組み立てる時の力加減はいつも以上に慎重さを要します。
底部はバーニアを始め、各部ディテールも細密で、細部はこだわりの造形。
比較
同スケールのV作戦シリーズとの比較
全高は一般的なMSより低めながら、その巨大なキャノン砲のおかげで、ボリューム不足は微塵も感じさせません。
大型機にも引けを取らない存在感は、確実に備えています。
オプション兵装を持たないガンタンクに、付属の装備は一切ありません。
何も付属しません。
オプションやギミックが充実した、現在の視点では少し物足りない印象。
と言っても、同時期に発売されたズゴックやゴッグ等も手ぶらが基本なので、18年前はこれが主流だったのです。
アクション
ということで、「HGUC ガンタンク」でした。
総合的に見て、HGUC初期のキットということを考慮しても、このキットの完成度はシリーズでも群を抜いています。
可動域に関してはお世辞にも優秀とは言えないものの、プロポーションやディテールに関してはかなり評価が高いです。
色分けも完璧と言っても良い程で、軟質素材やクリヤーパーツの使用といった製品仕様は、当時としても画期的でした。
さらに驚くべきはその価格。
定価で864円ですが、ホビー用品店等や通販では、ほぼ500円という破格の安さ。
オプション等も付属しない分、価格破壊同然の低価格が実現し、現行の製品より遥かに安い価格で入手出来るのは大きな強み。
Amazonのカスタマーレビューでは4.3と高評価で、HGUC ガンタンクが傑作キットであることを物語ります。
より完成度を高めるにつれ、改修部分は多々存在しますが、旧キットの改修に慣れているなら十分対処可能です。
ジオラマの素材としても使用でき、ミリタリー色の強いガンタンクにとっては本領発揮といった趣。
ちなみに、今回は以下のように完成させました。
元々のキットのポテンシャルが高いため、主に各部のディテールアップやウェザリングが中心。
比較的手軽ながらも、細部をディテールアップし、よりポテンシャルを引き出せるよう改良↓
作例の詳細は下記リンクよりどうぞ↓
それではみなさん。
楽しいホビーライフを。
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