今回のガンプラは「機動戦士ガンダムMS IGLOO 一年戦争秘録」より、超弩級戦車こと「ヒルドルブ」をご紹介。
発売から既に11年が経過していますが、未だにこれを超える立体物は存在せず。
こちらは「HGUC」ではなく、主に艦船等のキット化を主とする「EXモデル」ブランドで1/144スケールでキット化されており、表面の非常に緻密なディテールやボリューム感がウリ。
それに比例して税込7,140円と、並みのMGすら凌駕する高価なガンプラですが、その完成度は同スケールのガンプラの中でも白眉とも言える程。
それでは、早速レビューへと参りましょう。
パッケージ
付属品一覧
数量それ自体は1/100スケールと同等。
組み立ては2時間程度で完成。
水転写デカール
水転写デカールは、本キットオリジナルの仕様。
通常のガンダムデカールと全く同じものなので、扱い方も大体同じ。
YMT-05 ヒルドルブ
「YMT-05 ヒルドルブ」は、ジオン公国が試作した超弩級戦闘車両である。
ジオン公国は地球圏制圧に際し、地球連邦の地上拠点や大型陸戦艇といった戦術目標を砲撃可能な、核融合炉搭載の巨大戦車(モビルタンク)として開発をスタートし、5年の歳月を経て完成。
しかし、既にロールアウトされていた「ザクⅡ」が各地で赫々たる戦果を上げており、加えて本機の運用はマゼラ・アタックの大量生産で代替え可能ということから、運用試験は中止され、不採用とされてしまう。
その後、地上での主力の座をも奪われた本機は、戦況が芳しくないという理由から、再評価試験と名目で再び徴用されるが、事実上の使い捨てとして戦線へ投入されることとなる。
主武装として搭載された30cm砲は宇宙戦艦から転用された巨砲で、最大射程は30kmを超え、その破壊力はMS程度なら一撃が粉砕する他、戦局に応じて各種砲弾(8種類)を使い分けることが出来る。
また、時速110km/hもの速度で地上を走行することが出来、この優れた走破性によって常に優位な間合いから砲撃を行うことが可能である。
さらにMSの技術を転用した車高可変能力により、簡易的な変形機構を備え、増設されたマニピュレーターとモノアイによって、近接戦闘にもある程度対応可能な汎用性を持つ。
本機はアリゾナ方面へ降下中に連邦軍のセモベンテ隊の攻撃を受けて戦闘を開始し、ソンネン少佐の操縦の元、鹵獲された「ザクⅡ」6機、「61式戦車」2両を単独で撃破する大戦果を挙げ、この戦闘でYMT-05は高い性能を誇示したが、同時に破壊されてしまう。
その後、この機体のコンセプトを元に「YMS-16 ザメル」が開発されることになり、重砲撃を目的とした支援用重MSを誕生させるきっかけとなった。
ということで、「ヒルドルブ」です。
ガンダムのメカとしては比較的マイナーな機体で、「モビルタンク」という独自のカテゴリーを持つ唯一の機体。
似たような機体に「陸戦強襲型ガンタンク」がありますが、あっちはMS扱い・・・分類がこれもうわかんねぇな。
キットは超弩級戦車の名に相応しいフォルムと威容で再現。
CGで描かれたヒルドルブの形状を忠実に再現しつつも、当時最新だったレーザー加工技術によって施された、精緻なディテールが機体を覆っているのが最大の特徴。
そのため、アニメーション準拠のHGUCと並べると、ディテールの差があまりにも大きいため、凄まじい違和感を感じてしまうということもあるので、同じくハイディテールな【ジ・オリジン】版を並べた方が無難。
組み立てそれ自体はガンプラと変わりませんが、細かいパーツが数多く成型されている関係で、非常に繊細な部分も持ち合わせております。
これが何を意味するのかと申しますと、HGのような大胆な取り扱いは出来ず、このヒルドルブはガンプラというよりは「スケールモデル」に近い分類なので、組み立てに際しても丁寧な作業を要求されます。
いつも以上に気を配らないと、あっという間に破損したり、気づかぬうちに紛失したりとてんやわんや状態となりますので、ガンプラ以外のプラモデル(主に戦車等のスケールモデル)の製作経験のある方向けです。
タンク形態
タンク形態は戦車をそのまま巨大化させたようなデザインで、劇中の姿そのままと言っても過言ではない造形で、まさに完璧という表現がここまで似合うガンプラも珍しいというもの。
この状態では主砲の旋回は出来ないため、これは戦車というよりは自走砲に近い分類。
機体表面に所狭しと施されたモールドは膨大で、細部の立体表現も極めて精緻。
特に車体側面の膨大なディテールは圧巻。
スモークディスチャージャーも、小サイズながら造形は良好。
車体後部の複雑な凹凸等も、忠実に再現。
細かいパーツの集合体なので、説明書をよく見て作業することを要求されます。
特に微小なパーツは、ピンセット等でつまんで作業すると効率が上がります。
車体後部も各部ディテールを精密に再現。
ケーブル部分には軟質素材を使用し、各部の質感の差異も再現。
機体の一部は可動し、ポージングを付ける際は可動の邪魔にならない方式。
履帯は軟質素材(合成ゴム)で成型され、「HGUC ガンタンク」に採用されているものよりも柔らかい素材。
機体の形状にも柔軟にフィットし、造形等も優秀な反面、合成ゴムなので実質塗装は不可能。
車体の裏側は、驚く程あっさりとした印象。
真下を見ること自体無いため、特にがっかりする必要はありません。
主砲は全長20cmという長大さで、形状やディテールは申し分ないものの、側面に現れる合わせ目が結構厄介。
スモークディスチャージャーや、センサー類は別パーツで再現。
全体的に見ても、機能的な立体表現はまさにEXモデルならではといったところ。
主砲は行俯角の調整が可能で、上下に約45度程可動。
主砲の動きに連動し、周辺のユニットも可動。
同スケールの「陸上自衛隊 10式戦車」との比較。
現用戦車と比較して、十数倍はあろうかという質量差で、いかにヒルドルブが巨大か伝わる一枚で。
最早、80センチ列車砲並みの巨体で草。
変形
変形は車体中央のパーツのみを換装します。
差し替え用胴体パーツ。
完全変形を捨てた分、造形やディテールは秀逸。
胴体関節部等、見えない箇所の情報量も抜かり無し。
胴体を差し替え、ハンドパーツを取り付けて完成。
モビル形態
戦車からMSの上半身が起き上った形態。
ジオン版ガンタンクといった趣きで、ミリタリー色の強い「MSイグルー」を象徴する姿。
大胆にも差し替えで再現されていますが、そもそもどこに上半身が収まるスペースがあるのかも永遠の謎なので、特に不満に感じる要素は無し。
加えて、差し替え式にしたことで、塗膜の保護に気を使わなければならない塗装派には嬉しい仕様。
バストアップ。
胴体と頭部が一体化した、独特のフォルムが個性的な上半身。
角ばった硬質感溢れる立体形状ながら、所々に優美な曲線も併せ持つのが特徴。
モノアイは筒状のクリヤーパーツで再現され、無色透明なので塗装で好みの色を選択可能。
また、内部はスペースにも余裕があるため、モノアイ可動化や発光ギミック再現等も比較的容易。
胴体は左右にのみ旋回可能。
360°旋回可能なので、真横はおろか真後ろまで機体を回転させることが可能で、この形態で戦車としての本領発揮。
ショルダーアーマーは回転可動。
左右にもある程度は可動します。
肩部はボールジョイント接続で、回転可動のみ可能。
肩のショベルアームは可動箇所が多く、フレキシブルに可動しますが、ABSやポリキャップが用いられているわけでもないので、摩耗による関節のヘタリは尋常ではないスピードで発生。
加えて基部が回転するため、極めて自由度が高いのも強み。
腕部は剥き出しのフレームがメカニカルな造形。
見た目とは裏腹に、変形機構の副次的効果によぅて、肘は180°近く可動する等中々良好。
付属のマニピュレーターはハイディテール仕様ながら、握り拳等が無いため、若干物足りない印象。
幸いにもビルダーズパーツHDに対応しているため、1/144スケール【ジオン系】を選んで換装するだけでも、大分印象も引き締まって見えます。
「RG ザクⅡ」と比較。
並べるなら情報量の多いRGの方が、全体的に違和感無いのが印象。
後継機のザメルと。
違いは、タンクから二足歩行に進化した程度の変化。
オプション
オプションは「交換用ハンドパーツ」、「マシンガン」、同スケールの「キャラクターフィギュア」が付属。
105mmカスタムマシンガン。
ザク・マシンガンよりも短銃身化しており、取り回しも比較的簡単なので、ポージングも付けやすいのが大きなメリット。
フォアグリップは可動式。
マシンガンは通常、本体とドラムマガジンを個別に分解して機体に搭載。
マガジンはショルダーアーマー内側に取り付け可能。
ザクマシンガンも保持可能ですが、かさばるもので無ければ殆どの銃器は保持可能。
付属のフィギュアは、立ち姿のソンネン少佐と甲板員が付属。
指の腹に収まるサイズながら、モールドも精緻に処理されています。
また、1/144スケールならば「ザク・マシンガン」も保持可能。
アクション
ということで、「EXモデル ヒルドルブ」でした。
本体のプロポーションや情報量は、文句のつけようがない程素晴らしく、差し替えながらも可変ギミックを内蔵している等、ヒルドルブ立体物の決定版と言っても過言ではありません。
合わせ目も砲身以外は殆ど目に付かず、ゲート痕も目立ちにくいパーツ構成も見事な設計。
可動箇所は多いものの、可動範囲それ自体は広くなく、「HGUC ガンタンク」と大差ないレベル。
遊ぶためのガンプラではなく、あくまで観賞用モデルに近い部類なので、大胆なアクションポーズを付けて遊ぶのには向かず。
反面、そのサイズや繊細なディテールは本キットの魅力で、ミリタリー然とした劇中の雰囲気を十分感じさせるフォルムも忠実に再現。
塗装やウェザリング等もしやすく、人によって色々な仕上がりとなるのも魅力の一つ。
そして、今回はこのように完成させました。
ミリタリー色の強いヒルドルブだけに、ウェザリングを交えた塗装による効果は絶大。
改修に関しては下記リンクよりどうぞ↓
作例に関する詳細は下記リンクよりどうぞ↓
それではみなさん。
楽しいホビーライフを。
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大変参考になりました。上手に作っていますね。自分も戦車を作ってきたので、解ります。連邦軍の61式戦車も、いいですね。でも、ジオン軍が、好きなので、ヒルドルブは、手にいれたいアイテムなので、貴重な制作情報として、参考にします。ドイツ軍風に塗装したいと思います。今、購入するかどうか迷ってますが、購入しようと思います。画像を拝見して、判断しました。画像のよいに、出来ればいいですが。やってみます。貴重な画像ありがとう。
松井 弘美様
コメントありがとうございます♪
お褒めのお言葉を賜り、誠に光栄です。
レビューが何かしらのお役に立てたようで幸いです。
同スケールの61式戦車や、マゼラ・アタック等、宇宙世紀の戦車と一緒に並べても良いかもしれませんね。
実はパーツの組み間違い等もあり、結構適当に作ってあったりします。
ヒルドルブ自体は人気のある機種ですし、塗装で色々と化けさせるのも面白そうですね!
注意点として、再販があまりなく、メーカーが現時点ではパーツの請求を受け付けていないので、極力パーツを壊さないように注意が必要です。
あくまで私個人の主観ですが、生産数の少ないプラモデルは、転売の的にされて価格を高額に設定されてしまいがちなので、定価なら迷わず買ってしまうのも手です。
一番良いのは、定価以下で買える状況にあることですが(汗)
製作の方も、どうぞ頑張ってください。